書評

さあ、子どもたちを真ん中に 自由・設定保育の枠を越えて』

岩倉政城 [著]

“10年先20年先を見つめている仕事”

[評者] 群馬県 たけのこ保育園園長 國井洋子

 本書は教育者・保育者が「自由保育」と「設定保育」という、二つの保育形態の狭間で揺れ動く姿を客観的に見つめ直し、そこから本当の保育のあり方を探っていきます。読者は冒頭部分の「園庭が伝える保育観」や、「群れ遊ぶ子どもの姿」 から、子どもの表情にみえるものの大切さにぐいぐいと惹き込まれることでしょう。
 現代日本の教育が「指導」という言葉で子どもたちの瞳の輝きを奪っている現実に対して、「未熟な」園児は指導対象なのかと、鋭い疑問を投げかけています。「設定保育」と「自由保育」で育ってきた子どもたちが15歳になったときの姿の比較やそれぞれの課題など、幼児期の教育・保育の成果は今求めるのではなく、10年先20年先を見つめている仕事であることを教えてくれます。そうした検証のなかで、あらゆる領域から「指導」を卒業し、「自由保育」や「設定保育」の枠を越える必要性を語り、集団の可能性が最も発揮される「子どもたち中心の保育」を提唱しています。
 著者は本書のなかで「未来への希望に満ち満ちた遊びをめざして、今日自分たちが作った既成概念を壊し、新しい自分たちを創造して進むのです。こうした未来への希望を保育者が保障し、押しとどめたり禁止したりしないからこそ、子どもたちは『明日もあさってもボクたちのものだ』と、やってくる未来を確信してのびのびと破壊と再生をくりかえし、らせん状の発展をとげていきます。これが子どもたちを中心とした保育の核心です。」と述べています。
さらに、子どもたち中心の保育を展開するための保育者の課題に対して、「よし、私たちの園でもやってみよう」と思えるような、段階的な取り組みが提案されています。その環境を考える時に、くめども尽きない遊びの素材は、まず自然の中にあること。そして、本書を読むと、子どもたち中心の保育は保育者たちにとっても、限りなく豊かで魅力的なものであることが見えてくるでしょう。ぜひ、保育園・こども園・幼稚園で働く皆さんで本書を読み合い、実践のヒントにしていただくことをお勧めします。

書籍情報

さあ、子どもたちを真ん中に 自由・設定保育の枠を越えて』
 岩倉政城 著 / 定価(本体1300円+税) / 2018年7月発売